笠木(かさぎ)が原因の雨漏りについて
- Hinano
- 2023年9月8日
- 読了時間: 13分
バルコニーの手すりが錆びてぐらついている。シーリング※が劣化して剥がれている。
※シーリングはシリコンやポリウレタンなどの樹脂でできていて、外壁材の防水性や耐久性を維持するために重要な役割を果たしています。
雨漏り原因の箇所として意外と多いのが、ベランダやバルコニー、屋上です。さらにその中でも、劣化による雨漏りを引き起こしやすいのが「笠木」と呼ばれる場所です。
雨漏りの原因になりやすいけれど、気づきにくい場所、それが笠木です。 笠木とは何か、その役割から、どうして笠木が雨漏りの原因になってしまうのか、
そして修理方法などをご紹介していきます。 雨漏りは放っておけば建物をどんどん傷めます。現在雨漏りにお困りで原因がはっきりしない方、ベランダ笠木の劣化が気になっているという方も、ご参考にお読みいただけましたら幸いです。
笠木の役割とは? ベランダやバルコニーの外周には、手すり代わりの壁がありますよね。また屋上(陸屋根)の周囲にもパラペットという背の低い壁が備えられています。 その壁の一番上に被せられている仕上げ材が「笠木」です。 ベランダや屋上以外では、屋内の階段手すりやお洒落な塀の上部、建物をすっきり見せるため屋根の周りに高く造られた外壁の最頂部に取り付けられている部材も笠木と呼びます。
笠木とはもともと冠木(かぶき)とも呼ばれ門や鳥居の一番上に渡す木材のことを差しました。 住宅や建物に使われる笠木には、見た目のデザイン性を上げるための装飾的な役割もありますが、建物にとってとても大切な機能も果たしているのです。
文字通り「笠」、つまり笠木は、上から降り注ぐ雨や紫外線から手すりや塀などを守る役割を持っています。 ベランダ・バルコニーの手すり壁に設置されている笠木、屋上や屋根周りのパラペットに設置されている笠木も、その本体が雨風に晒されるのを防いでいます。
ベランダ・バルコニーは雨漏りしやすい?
ベランダやバルコニーというのは建物に対して外側に飛び出していて、雨が降りかかる部分です。屋根がついているタイプのベランダであったとしても、少なからず雨の影響を受けます。 しかもベランダ・バルコニーというのは、「外壁との接合部分」「床と立ち上がりの境目」「出っ張った手すり壁の角」など、建材同士の継ぎ目が多く存在し、そういった箇所は部材の劣化と共に雨漏りを引き起こす原因となりやすいです。 雨漏りというと屋根から、というイメージがあるかもしれませんが、「一階天井からの雨漏りを調べてみたらベランダやバルコニーが原因だった」というケースも多いのです。
特に、笠木が設置されている手すり壁というのは、せり出していて雨風の影響を受けやすい場所ですよね。手すり壁の多くは上部が平らになっていて雨が流れにくい形をしていることも、劣化を招きやすい要因です。そんな傷みやすい手すり壁を守っている笠木ですが、笠木自体に不具合があれば当然、雨水の浸入を許してしまうこととなり、雨漏りの要因になります。 「ベランダ・バルコニー、陸屋根を原因とする雨漏り」のうち約半数が笠木周りから発生しているともいわれるほど、トラブルの多い箇所です。
笠木が原因の雨漏りになってしまうとどんなことが起こるの?
ベランダやバルコニー、屋上に使われる笠木は雨に濡れるため、ほとんどの場合ガルバリウム鋼板やアルミニウム、ステンレスなどの金属で作られています。金属は水を通しませんが、劣化などの不具合が原因で笠木の下に雨水を浸入させてしまうことがあります。 笠木の下も、防水シートや防水テープ、木材などで保護されていますが、経年劣化や施工不良などが原因で破れたり腐食したりして、ダメージが広がってしまうのです。 では手すり壁に雨漏りが発生するとどうなるのでしょうか。
ベランダ裏側の軒天への被害
笠木から手すり壁を伝って下に流れた雨は、ベランダの裏側への被害となって現れます。 下から見上げてみて、ベランダ裏軒天に染みが出来ていた、化粧板が浮いている等の症状があれば、ベランダの床か手すり壁などからの雨漏りである可能性が高いです。
階下の室内への被害
ルーフバルコニーで下が部屋になっている場合には、その部屋の天井隅や窓枠などから雨漏り症状が現れます。ひどくなれば天井や壁紙の修繕も必要になってしまいます。 屋上のパラペット笠木を原因とする雨漏りでも同様に、階下の室内に被害が出ることがあります。
躯体の劣化
笠木からの雨漏りに気づかず長い間放置してしまうと、ベランダ・バルコニーや外壁の構造を造っている木材が腐食してしまいます。修繕のためベランダを解体してみたら内部がボロボロだった、ということ。そんなことになれば普段の使用も危険ですし、腐食した木材はシロアリ被害も招きます。 RC造の建物の場合でも雨漏り被害は無縁ではなく、内部の金属が腐食して錆が発生し体積が増えることでコンクリートを破壊してしまうこともあります。
ご自宅の笠木は大丈夫?笠木からの雨漏り危険信号
「我が家の雨漏りも笠木が原因かもしれない」
「雨漏りを引き起こす笠木ってどんな状態?」
ここまでお読みいただきご不安のお持ちの方は、笠木に次のような症状がないかチェックをしてみてください。特に、笠木周りの外壁に不自然な雨だれ跡や外壁材の浮きがある場合は、雨水の流れが適切になっていない可能性があります。
笠木の不具合チェックポイント
釘が緩んでいる・釘穴が錆びている
笠木を固定している釘やビスが浮いてきてはいませんか? また、その周りに錆が拡がっていませんか? 緩んだ隙間がわずかでも、雨水が入り込み雨漏りになってしまうケースもあるのです。特に釘やビスは笠木から下地の防水シートや木材まで貫通しているので、一気にダメージを拡げてしまう危険性が高いです。入り込んだ水分が下地の木材を腐食させることで、固定力をさらに低下させてしまう悪循環が起こります。 「脳天打ち」と呼ばれる、釘が真上から打ち付けてあるようなケースは特に雨漏りの原因となりやすい施工方法です。雨が降ってくる上に向けて穴を空けているのですから当然ですよね。穴をふさぐためシーリングが施されていることもありますが、そのシーリングが劣化していないかも確認してみてください。 また、笠木の上に手すりが別パーツとして取り付けてある場合には、その分釘穴が増えることになるので特に注意してチェックしてみましょう。
笠木にズレや浮きがある
笠木の板金がずれて隙間が生じていたり、歪んで浮いたりはしていませんか? 継ぎ目のジョイントカバーが外れかかってはいませんか?
鋼板やアルミニウムなどの金属は温度差でわずかに伸縮します。そしてそれを繰り返すうちに変形したり、留め具や釘が緩んでくることで外れかかってしまうこともあります。 変形や浮きによって隙間が出来ればそこから雨水が入り込んでしまう恐れがあります。 吹きさらしの屋上では、パラペット笠木が風にあおられることで大きく歪み、ある日突然パラペットから剥がれてしまう、ということもあります。
笠木が錆びている
水分と酸素によって引き起こされる腐食は金属にとって大敵です。腐食が進行すると金属の耐久性が著しく弱くなってしまいます。 笠木表面や端の方から赤茶色の錆が広がってはいないでしょうか。錆びて脆くなれば変形にも繋がりますし、笠木に穴が空いてしまえばそこから雨漏りになってしまうかもしれません。
シーリングが劣化している
笠木同士の繋ぎ目、外壁と笠木の接合部分(取り合い)、釘穴の周りなどに充填されたシーリングが傷んで剥がれていませんか?
シーリングは寿命が短く、日々紫外線にさらされ続ければ数年で目に見える劣化が始まってしまうことがあります。 建材の隙間から雨風が入り込むのを防いでくれるシーリングですが、経年で黒ずみ、硬くなってくると、割れたり剥がれたりしてその役割を果たさなくなってしまうのです。
笠木のサイズが合っていない
どちらかというと施工そのものに問題があるケースです。 手すり壁の厚さに対して笠木の幅が広すぎると大きく隙間が空いてしまうのでそこから雨が吹き込む恐れがあります。指が簡単に入るくらい空いているものは注意です。 また、覆いかぶさった笠木の下がりの部分が極端に短いものも同様に雨の吹き込みを招きます。
笠木とその下の手すり壁の間に隙間が全く無く、笠木内部が密閉された状態は雨漏りが発生しやすいと言えます。「密閉されていれば雨が入らなくて安心じゃないの?」と思われるかもしれません。 しかしこれまでご紹介したような不具合により雨水が入り込んでしまったらどうでしょう。また、笠木内部には湿気が溜まることもあります。そういったとき、換気のためのわずかなスペースが作られていることはとても大切です。密閉されていると逃げ場を失った水分が内部の木材を腐食させ、そのために釘が緩み笠木が浮いてしまうことで雨漏りの原因となるのです。 少々築年数の長い建物では、もともと笠木が密閉されるような造りになっているものもあります。また、笠木の浮きが気になって業者に修理を依頼したらシーリングで塗り固められてしまい、結果として雨漏りになってしまった…というケースもありました。
湿気や水分を逃がすため隙間を設ける、という構造はお住まいの中では珍しいことではありません。しかし知識のない業者によって雨漏りが引き起こされてしまうこともあるのです。
笠木のメンテナンス・修理方法
シーリングの補修
シーリングが劣化したことが原因で雨漏りが発生した場合、そしてその雨漏りが軽度な場合に有効です。笠木板金同士の継ぎ目、釘穴周り、手すり部品周り、笠木と外壁との取り合い部分などのシーリングを充填し直します。 一度補修をしても、シーリングは傷みが早いので5年程度で点検されることをおすすめします。
笠木の塗装メンテナンスは有効?
笠木への最も手軽なメンテナンスが塗装です。外壁塗り替え工事やベランダ防水工事の際に付帯的に行われることもあり、金属製笠木の腐食防止として定期的な塗装は有効です。塗膜によって笠木を酸素と水による劣化から守ることができます。 しかし、既に雨漏りの原因になっている笠木への塗装は有効ではありませえん。 腐食がひどく穴が空いてしまっている場合や、笠木が歪んで隙間ができてしまっている場合には、塗り替えてもその穴や隙間は埋まりません。 そういった不具合がなければ、シーリング補修と同時に劣化予防として塗り替えを行うのは効果的です。
笠木の交換
笠木が変形している、風で捲れてしまった、錆が広がり穴が空いてしまった、という場合には笠木の交換工事が必要です。 また、既にベランダ裏や室内にまで雨漏りが達しているような場合は、下地の木材や防水紙もダメージを受けて損傷している可能性が高いです。状態を確認し、工事が必要な範囲を決めます。 被害を受けた範囲が大きければ、外壁材を剥がし構造体を補強するなどの大規模な工事になることも
例えば内部の下地木の腐食がひどい場合、腐食部分が出てくるまでモルタル外壁を剥がして撤去し、新しく下地を造ってから再び左官工事にて外壁を仕上げる工程が必要で、時間も費用もかさみます。
雨漏りを防ぐ、笠木を新しくするならこだわりたいポイント
笠木の交換工事をするのであれば、今後は雨漏りの心配が少ない笠木を選びたいですね。 全ての建材は日々劣化していくものなので、絶対に雨漏りを起こさない笠木というものはありませんが、素材や施工方法によって少しでも雨漏りのリスクを下げる方法はあります。 笠木には、板金を用いて職人さんが現場に合わせ加工し施工するタイプと、笠木用に作られた製品を取り付けていくタイプがあります。既製品はデザインが多様で雨漏り防止の工夫がされた商品が多くありますが、職人さんが加工する笠木はどんな形状の場所にも施工できるメリットがあります。笠木交換の際には、ご自宅にどのような笠木がベストか確認してみてください。
釘やビスの使用が少ない工法で
釘やビスで穴をあけた場所が雨ざらしになっていれば当然雨漏りの危険度は高まります。釘で留めるのであれば、真上よりも側面から、さらにその箇所は少ない方が安心です。 最近では、内部の笠木取り付け用ベースのみをビス留めし表面にはビス穴が露出しない笠木商品が多くあります。 また内部であっても手すり壁上部に穴が生じるのは浸水のリスクがあるので、出来る限り躯体に影響しない部分のみにしかビス留めを行わないような工夫がされている笠木も発売されています。
手すりが一体型の笠木を選ぶ
ベランダ・バルコニー壁には手すりが欲しい、という方は、笠木と手すりが一体になっているタイプのものを選びましょう。笠木の上から手すりをビス留めするのでは雨漏りリスクを高めるだけです。 ただし、笠木と一体型といっても劣化により部品が破損する可能性はあるので、定期的にチェックは行いましょう。
錆びにくいガルバリウム製・アルミ製が人気
ベランダ・バルコニー、屋上の笠木には主に金属製のものが使われますが、その中でも、比較的安価で加工がしやすく錆びに強いガルバリウム鋼板やアルミニウムがよく選ばれます。住宅のベランダ・バルコニー用の笠木であれば、換気の構造が工夫された製品や、片流れ型で水切りに優れた製品、そしてお洒落な製品も多くあります。また、ガルバリウム鋼板を加工して手すり壁のサイズにピッタリのものを取り付けてもらうこともできます。
気が付きにくいからこそ笠木は早めの補修を
笠木はデザイン面での役割も大きく、笠木があることでお住まいの外観が引き締まりますし、古びた笠木を新しいものに交換するだけで全体の印象が随分と変わるものです。 しかしただの飾りではなく、雨を受け止め躯体を守る、見た目以上に大切な働きをしているのが笠木です。 ところが、それほど意味のある箇所だとはこの記事を読むまで知らなかった、という方も多いかもしれません。 だからこそ、笠木からの雨漏りは原因として気づかれにくく、長く放置されてしまう事があるのが怖いところなのです。 笠木に打たれた釘が錆びているだけかと思っていたら、下地の合板まで腐食していた…。 階下の天井に雨染みが現れた頃には既にベランダの躯体がボロボロに…。 なんて事もありますから、笠木の修理は気が付き次第早めにご対応ください。 笠木が雨漏りの原因かどうか分からない、雨漏りが起こっているかは分からないけれど心配、という場合でもお気軽にお問合せください。
「笠木が原因の雨漏りに注意!ベランダ・バルコニー点検のポイント」まとめ ベランダ・バルコニーの手すり壁や屋上パラペットなどの上部に設置されているのが笠木です。雨や紫外線から躯体を守っています。 手すり壁やパラペットは雨の影響を受け雨漏りを起こしやすい箇所です。笠木の不具合が雨漏りに繋がってしまいます。 笠木が以下のような状態なら要注意です ・釘が緩んでいる・釘穴が錆びている ・笠木にズレや浮きが生じて隙間ができている ・笠木が腐食している ・シーリングの割れや剥がれがある 軽度の症状であればシーリング補修で済みますが、多くの場合笠木の交換が必要になります。併せて下地の木材や防水紙を補修し、防水処理を徹底します。 笠木を交換するなら雨漏りのリスクが低いものを選ぶのもポイントです。

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